器と花と水

　もう長いこと続けている習慣があります。それは日記をつけることです。一般的なことではありますが、私は日記から様々なインスピレーションを得ることができます。
　本作”器と花と水”のモチーフはタイトルそのまま、器、花そして水です。モチーフという言葉はしばしば題材という意味で使われますが、本来は作品の着想や動機を表すようです。であるならば、本作のモチーフは器と花と水というより、それらの関係性とした方が正しいかもしれません。
　作品の中で描かれる器や花にはモデルがありますが、そのどれもが具体的に参考にした対象はありません。記憶の中の器に花をさし、水を注ぐ。それらの関係性、例えば光沢のある陶器に映り込む花びらや、ガラスが屈折させる光、水が歪ませる風景を見ることは、空想というより観察です。そこには新しい発見があります。日記から得られる経験も同じかもしれません。