Ticket to ride (大洲大作の乗車区間)
Ticket to ride (大洲大作の乗車区間)
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東急線の切符をミシンで再現しました。2枚ひと組。これらには、誰かがいつも使っている/いた区間と、時刻が刻まれています。
世の中のデジタル化が進み、生活が便利になっていく一方で、消えゆく運命にある物もあります。例えばお金。財布に現金を持ち歩かない人も増えているのではないでしょうか。他にも手紙、レコード等、あげたらキリがありません。美術作品もNFTの登場と共に、物質としての価値を問い直されています。美術品は維持にコストがかかり、美術館の収蔵庫はどこもいっぱい。財産であるはずの美術品が、負の遺産になってしまいそうです。アートもデジタル化による新しい潮流を歓迎するばかりではく、自らの価値を、歴史を顧みながら証明しなくてはならない時期にきています。
ところで電車の切符を最後に購入したのはいつでしょう?本作品は消えゆく物質への哀悼の意が込められているのと同時に、人間同士がよりフィジカルな繋がりを感じていた時代を表す、ささやかなモニュメントでもあります。切符を切る音と、ミシンの音を思い出しながら手に取ってもらえれば幸いです。
*シリーズ2作目となる今作は、友人であるアーティストの大洲大作の区間です。鉄道の車窓や駅と路線の歴史などをモチーフに写真や映像インスタレーションを多く展開してきた大洲さんが選んだ区間は、今は存在しない二子玉川園駅からたまプラーザ駅。以下、大洲さんからのメッセージ(ステートメント)です。
“放射の線より、結びつなぐ線が良いと思った。大井町線を遡り、たどり着いたのが二子玉川。22年前、駅の名はまだ二子玉川園と言った。川と橋の大阪育ち、そばを流れる多摩川が、東京の住処の決め手となった。引き続いて親しんだ汀の風景は、やがて作品《flow / float》の素地を形作ってゆく。 まだ長閑な雰囲気を残していた駅前もやがて再開発が進む。少し静かなところを求めて、たまプラーザへ転居した頃は、これほど長く暮らすことになるとは思ってもみなかった。川は遠くなったが、季節を知らせる樹々の色と渡る風が、往来する日々の心を鎮めている。 点と線の鉄道。車窓を界面とし、うつる何ごとかを追う《光のシークエンス》ほか、私の作品はやはり「線」を辿ることも多いから、駅=「点」は盟友、青山悟に託した。2枚の小さな切符。彼の作家としての労働の時間と思考、私の作家活動を支えた通勤と思索の日々が、そこに重ねられている。”
素材 |
ポリエステルオーガンジーにミシン刺繍 |
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サイズ | 各30mm(縦)×57.5mm(横)、2点組 |
制作年 | 2023 |
額装 | アクリルケースあり |
NFT証明 | なし |
紙の作品証明書 | あり |
